第9回:EVEプロトコル──「不完全な天使」を使った新人類実験としての戦い

ステラーブレイド解剖

※本記事は『Stellar Blade(ステラーブレイド)』本編クリア済みの方向けです。
EVEプロトコル関連ログや終盤の展開についてのネタバレを含みます。


はじめに──「地球奪還作戦」の裏側にある違和感

作中で何度も名前が出てくる「EVEプロトコル」。

イヴたち空挺部隊にとっては、

ネイティブを駆逐し、
地球を奪還するためのマザースフィアの作戦

として教え込まれている、**“人類救済のための大計画”**です。

けれど、地上に残されたログ――
とくに回収屋イアンが残した「EVEプロトコルに関するメモ」に目を通すと、
この計画にはどうにも説明のつかない「穴」や「違和感」が見えてきます。

この記事では、

  • 表向きの「EVEプロトコル」と
  • 地上視点の「EVEプロトコル」のズレ

その両方を追いながら、

EVEプロトコルとは、
「不完全な天使」と「地上の記憶」を使った
新人類実験だったのではないか?

というところまで掘り下げてみたいと思います。


1. 表向きのEVEプロトコル──ネイティブ殲滅と地球奪還

まずは、イヴたちが信じている“公式定義”から。

  • 目的:ネイティブを殲滅し、地球を奪還すること
  • 旗印:人類のための聖戦/マザースフィアの救済計画
  • 実行部隊:限られた人数の空挺部隊(天使たち)

イヴにとってEVEプロトコルは、

  • マザースフィアに与えられた**「任務の名前」**であり
  • 天使としての存在意義そのもの

でした。

ここまでは、第1〜3回で整理してきた

  • 「二柱の神(アダム&マザースフィア)」
  • 「任務と信仰に縛られた天使イヴ」
  • 「真実を知らないまま始まる物語」

という“表層の骨格”の上にある、ごくまっとうな説明です。

しかし、地上側の視点から見ると、この計画はどうにも「おかしい」。

その違和感を、イアンのメモを手がかりに見ていきます。


2. 地上の視点:イアンが見抜いた「穴だらけの計画」

2-1. メモ#1──とても「計画」とは呼べない作戦

イアンはまず、EVEプロトコルを聞いたときの感想を
かなりストレートに書き残しています。

ざっくり要約すると、

  • 限られた人数の天使だけで地球奪還なんて現実的じゃない
  • 本気でネイティブを駆逐したいなら、
    またコロニーを落とす方が手っ取り早いはず
  • マザースフィアは地上の生き残りを
    とうの昔に「ゴミのように」見捨てた存在のはずで、
    いまさら慈悲深くなるとは思えない

軍事的な合理性で考えたとき、

「天使を少数ずつ送り込む」
という手法はあまりに非効率

です。

イアンの言葉を借りれば、
これはとても「大計画」とは呼べない。

むしろ、

「最前線だけがどんどんすり潰されていく、
消耗戦にしか見えない」

という厳しい視点です。


2-2. メモ#2──“意図的に無知なまま”送り出される天使たち

続くメモ#2では、イアンは天使たちの**「中身」**に注目します。

  • 天使たちは最終戦争の歴史をほとんど知らない
  • 旧人類についてもほぼ何も知らない
  • 任務に関する最低限のことだけを教え込まれた“兵器”にすぎない
  • そのうえで、これまで何度も任務に失敗してきており、
    「兵器としても大して優秀とは言えない」

ここで重要なのは、

天使の“無知”が、単に偶然ではなく
「初期設計としてそうなっている」

とイアンが感じ取っていることです。

第3回で整理したように、
イヴの弱点は「世界の構造を知らないこと」でした。

  • コロニー墜落の真相も
  • ネイティブの成り立ちも
  • 地上に取り残された人々の歴史も

ほとんど知らないまま、
「任務」と「マザースフィアへの信仰」だけ握らされて
地球に降ろされている。

イアンはそれを

「任務に必要なことだけ教え込まれた兵器」

と表現し、
そこに**意図的な“情報の偏り”**を嗅ぎ取っています。


2-3. メモ#3──不完全な天使と地上の生存者を使った「進化実験」?

メモ#3では、イアンの思考が一歩進みます。

  • マザースフィアは「決して過ちを犯さない」前提の存在
  • であれば、「失敗続き」に見えるEVEプロトコルも
    実は計画通り進んでいる可能性があるのでは?
  • ネイティブ殲滅・地球奪還は“もっともらしい口実”にすぎず、
    本当は別の目的があるのではないか?

そこでイアンがたどり着く仮説が印象的です。

・マザースフィアは、意図的に「出来損ないの天使」を作っているのではないか
・不完全な天使が、荒廃した地球でどのような変化・進化を遂げるかを見ているのではないか
・その目的は、人類存続のための「真なる新人類」を生み出すことかもしれない

要するに、

  • 戦闘能力としても
  • 情報量としても
  • 人格的にも

どこか**「足りない」天使たちを、
あえて地球に送り込み続けることで、

「彼女たちは、どんなふうに変わっていくのか?」
「どんな選択をし、何を学び、どんな“在り方”にたどり着くのか?」

を観測しているのではないか――という視点です。

ここまで来ると、
EVEプロトコルは

ネイティブ殲滅のための作戦
というよりも、
「不完全な天使と地上の生存者を使った巨大な進化実験」

として見えてきます。


2-4. メモ#4──「第七天使イヴ」と7回目のプロトコル

最後のメモ#4では、

「第七天使イヴが、七度目のEVEプロトコルとして派遣された」

という一文が、さらっと登場します。

ここから読み取れるのは、

  • EVEプロトコルはすでに6回失敗していること
  • 「イヴ」と呼ばれる存在が、
    第七空挺部隊の中でも特別な“第七天使”である可能性
  • 今回が、その長期実験の「第7フェーズ」である、というニュアンス

ゲーム内の見た目としても、
第七空挺部隊の中で「イヴだけスーツのデザインが違う」ことを思い出すと、

イヴは単なる“第七小隊の一人”ではなく、
EVEプロトコル第7フェーズの“主役”として設計された存在

と考えても、そこまで不自然ではありません。


3. イヴの弱点と欠陥は「最初から仕込まれた条件」だったのか?

ここまでを踏まえると、

イヴの弱点と欠陥は、
「マザースフィアが与えた初期パラメータ」
だったのではないか?

という見方が浮かび上がってきます。

3-1. 「無知」という弱点は、仕様か偶然か

第3回で整理した通り、イヴの弱点は

  • 世界の歴史を知らない
  • ネイティブが何者かを知らない
  • マザースフィアやエルダーの罪を知らない

という**徹底した「無知」**でした。

そしてイアンのメモは、
それが意図的な情報制限の結果であることを示唆していました。

  • 最初から真実を教えない
  • 任務とスローガンだけを教え込む
  • 戦場で拾ったログや人々の記憶を通じて、
    彼女自身に「真実へたどり着かせる」

この構造は、

「無知」という弱点を前提にした、
“成長ゲーム”としてのEVEプロトコル

とも言えます。

3-2. 欠陥=「自分の選択が誰かに与える影響を考え切れていないこと」

イヴの欠陥は、

自分の行動が、誰の生活や命にどう響くのかを
最初はうまく想像できていない

という、責任感の未熟さでした。

  • 任務優先で動いた結果、XIONが大きな被害を受ける
  • 自分の選択の裏側にある「誰かの暮らし」を
    痛いほど思い知る
  • レイヴンを前にしても「殺さない」選択をする
  • ネストでアダムの提案を前に、
    「誰かの言いなりではなく、自分の意思で選ぶ」段階にたどり着く

この流れを、EVEプロトコルの仮説と並べると、

マザースフィアは、「任務」と「責任」を
あえてアンバランスに与えたのではないか?

という読みもできます。

  • 任務意識だけは強く与える
  • しかし、任務の裏で誰が傷つくかまでは教えない
  • そのギャップに苦しませながら、
    **「どうやって責任を引き受ける存在になるか」**を観測する

イヴはその“第7フェーズの被験者”であり、
同時にその枠を抜け出す主人公でもある、という構図です。


4. EVEプロトコル=「不完全な天使」と「地上の記憶」を使った新人類実験

ここまでの要素をひとまとめにすると、
EVEプロトコルは次のように整理できます。

  1. 不完全な天使を地球に投じる
    • 歴史を知らない
    • 任務だけ教え込まれている
    • 感情や倫理も“中途半端”な状態
  2. 彼女たちが「何を見て、何を選ぶか」を観測する
    • 地上に散らばるログやメモを通じて
      真実へ近づくよう設計されたフィールド
    • XIONという「任務」と「暮らし」が交差する箱庭で、
      多くのサブクエストや記憶と出会わせる
  3. その結果から、「新人類の条件」を抽出する
    • どこまで真実を知った天使が
      どんな責任の取り方をするのか
    • それは、旧人類ともネイティブとも違う、
      新しい“人間の在り方”になり得るのか

つまり、EVEプロトコルは

「ネイティブを倒す作戦」
というよりも、

「不完全な天使が、
記憶と責任をどう引き受けるかを測る、
長期的な新人類実験」

として読むことができます。

そしてプレイヤーもまた、この実験の一部です。

  • ログをどれだけ拾うか
  • サブクエストをどこまで追うか
  • どのエンディングを迎えるか

それらはすべて、

「真実をどれだけ知ったうえで、
どんな未来を選ぶか?」

という問いへの、“あなた自身の解答”になっています。


5. おわりに──「第七天使イヴ」が実験から“卒業”するまで

第七天使イヴは、

  • 無知な兵器として
  • 出来損ないの天使として
  • 実験体としての被験者として

地球に送り出されました。

しかし、旅の中で彼女は、

  • 地上に残された無数の記憶を拾い
  • 自分の選択の裏で傷つく人々の姿を見て
  • レイヴンという「闇落ちした自分」を乗り越え
  • 最後には、アダムやマザースフィアの“プラン”の外側で
    自分の意志で未来を選ぼうとします。

その意味で、

イヴの物語は、
「EVEプロトコルの実験結果」
で終わるわけではありません。

マザースフィアが与えた
「無知」と「未熟さ」という初期条件を出発点にしながら、

  • 真実を知り
  • 責任を引き受け
  • それでもなお、誰かの計画ではなく
    自分の願いとして選ぶ

存在へと変わっていく――。

EVEプロトコルという枠組みを見なおすことで、
第七天使イヴの物語は、

「不完全な天使が、
神の実験から“人間として卒業していく”話」

として、さらに立体的に見えてくるのではないかと思います。

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