※本記事は『Stellar Blade(ステラーブレイド)』本編クリア済みの方向けです。
EVEプロトコル関連ログや終盤の展開についてのネタバレを含みます。
はじめに──「地球奪還作戦」の裏側にある違和感
作中で何度も名前が出てくる「EVEプロトコル」。
イヴたち空挺部隊にとっては、
ネイティブを駆逐し、
地球を奪還するためのマザースフィアの作戦
として教え込まれている、**“人類救済のための大計画”**です。
けれど、地上に残されたログ――
とくに回収屋イアンが残した「EVEプロトコルに関するメモ」に目を通すと、
この計画にはどうにも説明のつかない「穴」や「違和感」が見えてきます。
この記事では、
- 表向きの「EVEプロトコル」と
- 地上視点の「EVEプロトコル」のズレ
その両方を追いながら、
EVEプロトコルとは、
「不完全な天使」と「地上の記憶」を使った
新人類実験だったのではないか?
というところまで掘り下げてみたいと思います。
1. 表向きのEVEプロトコル──ネイティブ殲滅と地球奪還
まずは、イヴたちが信じている“公式定義”から。
- 目的:ネイティブを殲滅し、地球を奪還すること
- 旗印:人類のための聖戦/マザースフィアの救済計画
- 実行部隊:限られた人数の空挺部隊(天使たち)
イヴにとってEVEプロトコルは、
- マザースフィアに与えられた**「任務の名前」**であり
- 天使としての存在意義そのもの
でした。
ここまでは、第1〜3回で整理してきた
- 「二柱の神(アダム&マザースフィア)」
- 「任務と信仰に縛られた天使イヴ」
- 「真実を知らないまま始まる物語」
という“表層の骨格”の上にある、ごくまっとうな説明です。
しかし、地上側の視点から見ると、この計画はどうにも「おかしい」。
その違和感を、イアンのメモを手がかりに見ていきます。
2. 地上の視点:イアンが見抜いた「穴だらけの計画」
2-1. メモ#1──とても「計画」とは呼べない作戦
イアンはまず、EVEプロトコルを聞いたときの感想を
かなりストレートに書き残しています。
ざっくり要約すると、
- 限られた人数の天使だけで地球奪還なんて現実的じゃない
- 本気でネイティブを駆逐したいなら、
またコロニーを落とす方が手っ取り早いはず - マザースフィアは地上の生き残りを
とうの昔に「ゴミのように」見捨てた存在のはずで、
いまさら慈悲深くなるとは思えない
軍事的な合理性で考えたとき、
「天使を少数ずつ送り込む」
という手法はあまりに非効率
です。
イアンの言葉を借りれば、
これはとても「大計画」とは呼べない。
むしろ、
「最前線だけがどんどんすり潰されていく、
消耗戦にしか見えない」
という厳しい視点です。
2-2. メモ#2──“意図的に無知なまま”送り出される天使たち
続くメモ#2では、イアンは天使たちの**「中身」**に注目します。
- 天使たちは最終戦争の歴史をほとんど知らない
- 旧人類についてもほぼ何も知らない
- 任務に関する最低限のことだけを教え込まれた“兵器”にすぎない
- そのうえで、これまで何度も任務に失敗してきており、
「兵器としても大して優秀とは言えない」
ここで重要なのは、
天使の“無知”が、単に偶然ではなく
「初期設計としてそうなっている」
とイアンが感じ取っていることです。
第3回で整理したように、
イヴの弱点は「世界の構造を知らないこと」でした。
- コロニー墜落の真相も
- ネイティブの成り立ちも
- 地上に取り残された人々の歴史も
ほとんど知らないまま、
「任務」と「マザースフィアへの信仰」だけ握らされて
地球に降ろされている。
イアンはそれを
「任務に必要なことだけ教え込まれた兵器」
と表現し、
そこに**意図的な“情報の偏り”**を嗅ぎ取っています。
2-3. メモ#3──不完全な天使と地上の生存者を使った「進化実験」?
メモ#3では、イアンの思考が一歩進みます。
- マザースフィアは「決して過ちを犯さない」前提の存在
- であれば、「失敗続き」に見えるEVEプロトコルも
実は計画通り進んでいる可能性があるのでは? - ネイティブ殲滅・地球奪還は“もっともらしい口実”にすぎず、
本当は別の目的があるのではないか?
そこでイアンがたどり着く仮説が印象的です。
・マザースフィアは、意図的に「出来損ないの天使」を作っているのではないか
・不完全な天使が、荒廃した地球でどのような変化・進化を遂げるかを見ているのではないか
・その目的は、人類存続のための「真なる新人類」を生み出すことかもしれない
要するに、
- 戦闘能力としても
- 情報量としても
- 人格的にも
どこか**「足りない」天使たちを、
あえて地球に送り込み続けることで、
「彼女たちは、どんなふうに変わっていくのか?」
「どんな選択をし、何を学び、どんな“在り方”にたどり着くのか?」
を観測しているのではないか――という視点です。
ここまで来ると、
EVEプロトコルは
ネイティブ殲滅のための作戦
というよりも、
「不完全な天使と地上の生存者を使った巨大な進化実験」
として見えてきます。
2-4. メモ#4──「第七天使イヴ」と7回目のプロトコル
最後のメモ#4では、
「第七天使イヴが、七度目のEVEプロトコルとして派遣された」
という一文が、さらっと登場します。
ここから読み取れるのは、
- EVEプロトコルはすでに6回失敗していること
- 「イヴ」と呼ばれる存在が、
第七空挺部隊の中でも特別な“第七天使”である可能性 - 今回が、その長期実験の「第7フェーズ」である、というニュアンス
ゲーム内の見た目としても、
第七空挺部隊の中で「イヴだけスーツのデザインが違う」ことを思い出すと、
イヴは単なる“第七小隊の一人”ではなく、
EVEプロトコル第7フェーズの“主役”として設計された存在
と考えても、そこまで不自然ではありません。
3. イヴの弱点と欠陥は「最初から仕込まれた条件」だったのか?
ここまでを踏まえると、
イヴの弱点と欠陥は、
「マザースフィアが与えた初期パラメータ」
だったのではないか?
という見方が浮かび上がってきます。
3-1. 「無知」という弱点は、仕様か偶然か
第3回で整理した通り、イヴの弱点は
- 世界の歴史を知らない
- ネイティブが何者かを知らない
- マザースフィアやエルダーの罪を知らない
という**徹底した「無知」**でした。
そしてイアンのメモは、
それが意図的な情報制限の結果であることを示唆していました。
- 最初から真実を教えない
- 任務とスローガンだけを教え込む
- 戦場で拾ったログや人々の記憶を通じて、
彼女自身に「真実へたどり着かせる」
この構造は、
「無知」という弱点を前提にした、
“成長ゲーム”としてのEVEプロトコル
とも言えます。
3-2. 欠陥=「自分の選択が誰かに与える影響を考え切れていないこと」
イヴの欠陥は、
自分の行動が、誰の生活や命にどう響くのかを
最初はうまく想像できていない
という、責任感の未熟さでした。
- 任務優先で動いた結果、XIONが大きな被害を受ける
- 自分の選択の裏側にある「誰かの暮らし」を
痛いほど思い知る - レイヴンを前にしても「殺さない」選択をする
- ネストでアダムの提案を前に、
「誰かの言いなりではなく、自分の意思で選ぶ」段階にたどり着く
この流れを、EVEプロトコルの仮説と並べると、
マザースフィアは、「任務」と「責任」を
あえてアンバランスに与えたのではないか?
という読みもできます。
- 任務意識だけは強く与える
- しかし、任務の裏で誰が傷つくかまでは教えない
- そのギャップに苦しませながら、
**「どうやって責任を引き受ける存在になるか」**を観測する
イヴはその“第7フェーズの被験者”であり、
同時にその枠を抜け出す主人公でもある、という構図です。
4. EVEプロトコル=「不完全な天使」と「地上の記憶」を使った新人類実験
ここまでの要素をひとまとめにすると、
EVEプロトコルは次のように整理できます。
- 不完全な天使を地球に投じる
- 歴史を知らない
- 任務だけ教え込まれている
- 感情や倫理も“中途半端”な状態
- 彼女たちが「何を見て、何を選ぶか」を観測する
- 地上に散らばるログやメモを通じて
真実へ近づくよう設計されたフィールド - XIONという「任務」と「暮らし」が交差する箱庭で、
多くのサブクエストや記憶と出会わせる
- 地上に散らばるログやメモを通じて
- その結果から、「新人類の条件」を抽出する
- どこまで真実を知った天使が
どんな責任の取り方をするのか - それは、旧人類ともネイティブとも違う、
新しい“人間の在り方”になり得るのか
- どこまで真実を知った天使が
つまり、EVEプロトコルは
「ネイティブを倒す作戦」
というよりも、
「不完全な天使が、
記憶と責任をどう引き受けるかを測る、
長期的な新人類実験」
として読むことができます。
そしてプレイヤーもまた、この実験の一部です。
- ログをどれだけ拾うか
- サブクエストをどこまで追うか
- どのエンディングを迎えるか
それらはすべて、
「真実をどれだけ知ったうえで、
どんな未来を選ぶか?」
という問いへの、“あなた自身の解答”になっています。
5. おわりに──「第七天使イヴ」が実験から“卒業”するまで
第七天使イヴは、
- 無知な兵器として
- 出来損ないの天使として
- 実験体としての被験者として
地球に送り出されました。
しかし、旅の中で彼女は、
- 地上に残された無数の記憶を拾い
- 自分の選択の裏で傷つく人々の姿を見て
- レイヴンという「闇落ちした自分」を乗り越え
- 最後には、アダムやマザースフィアの“プラン”の外側で
自分の意志で未来を選ぼうとします。
その意味で、
イヴの物語は、
「EVEプロトコルの実験結果」
で終わるわけではありません。
マザースフィアが与えた
「無知」と「未熟さ」という初期条件を出発点にしながら、
- 真実を知り
- 責任を引き受け
- それでもなお、誰かの計画ではなく
自分の願いとして選ぶ
存在へと変わっていく――。
EVEプロトコルという枠組みを見なおすことで、
第七天使イヴの物語は、
「不完全な天使が、
神の実験から“人間として卒業していく”話」
として、さらに立体的に見えてくるのではないかと思います。