ストーリーについて考えていて、最近しっくりきている見方があります。
それは、
ストーリーには、二つの物語が同時に流れている
ということです。
一つは、
主人公が欲しいものを手に入れようとする物語。
そしてもう一つは、
その過程で、主人公自身が変わっていく物語。
この二つが重なっているから、ストーリーは面白くなるんじゃないか。
最近はそんなふうに考えています。
一つ目は「欲しいものを追う物語」
主人公には、何か欲しいものがあります。
自由になりたい。
誰かを助けたい。
勝ちたい。
故郷へ帰りたい。
犯人を見つけたい。
求めるものは作品によって違います。
でも、何かが欲しいから主人公は行動します。
ところが、当然うまくはいきません。
邪魔する相手がいる。
考えていた方法が失敗する。
知らなかったことを知る。
何かを失う。
すると、
「じゃあ、次はどうする?」
と新しい決断をすることになります。
方法を変える。
別の道を選ぶ。
時には大きな代償を払う。
そうして主人公は、欲しいものに向かって進んでいきます。
これはとても分かりやすい物語です。
私たちも主人公と一緒に、
「この人は、欲しいものを手に入れられるんだろうか?」
とゴールを追いかけます。
でも、もう一つの物語も進んでいる
その一方で、主人公の内側でも別の物語が進んでいます。
ストーリーの最初にいる主人公は、たいてい完成された人間ではありません。
弱いところがある。
過去に囚われている。
考え方に偏りがある。
そのせいで、誰かを傷つけている。
自分に何が足りないのか、本人にも分かっていません。
でも主人公は、
「自分を変えなきゃ」
と思って旅を始めるわけではありません。
主人公が見ているのは、あくまで目の前のゴールです。
欲しいものがあるから動く。
ただ、それを本気で追いかけていくと、どうしても自分自身とぶつかることになる。
今までのやり方では通用しない。
今まで正しいと思っていたことが間違っていた。
自分の弱さから逃げられなくなる。
大切だと思っていたものを失って初めて、本当に大切だったものに気づく。
そうして、
欲しいものを追いかけていたはずの物語が、いつの間にか「自分は何者なのか」と向き合う物語にもなっていく。
これが二つ目の物語です。
二つの物語は、別々に進んでいるわけではない
ここが一番面白いところだと思います。
「欲しいものを追う話」と「主人公が変わる話」が、別々に用意されているわけではありません。
むしろ、
欲しいものを追うからこそ、主人公は変わる。
邪魔する相手がいるから、自分の弱さが見える。
失敗するから、考え方を変えざるを得なくなる。
何かを失うから、自分にとって本当に大切なものが分かる。
厳しい選択を迫られるから、「自分はどういう人間なのか」が表に出る。
つまり、外側で起きている出来事が、そのまま主人公の内側を揺さぶっている。
だから、
「欲しいものを手に入れられるのか?」
という物語を追っていたはずなのに、最後には、
「この旅を通して、この人はどう変わったんだろう?」
というところまで見届けることになります。
欲しいものと、本当に必要なもの
この二つの物語を考えていると、もう一つ面白いことがあります。
それは、
主人公が欲しがっているものと、主人公に本当に必要なものは、必ずしも同じではない
ということです。
欲しいものは、本人にも分かっています。
だから追いかけることができます。
でも、
自分の何が問題なのか。
何に気づく必要があるのか。
何を変えなければならないのか。
そういうことは、本人にも分かっていないことがあります。
だからストーリーを見る私たちは、
「この人は欲しいものを手に入れられるのか?」
を追いながら、同時に、
「この人は、本当に必要なものに気づけるのか?」
も見ているのかもしれません。
欲しいものを追う旅が、そのまま本当に必要だったものに気づく旅にもなっている。
私は、この構造がすごく好きです。
ストーリーには、二つの物語がある
今のところ、私はストーリーをこんなふうに見ています。
一つは、主人公が欲しいものを追う物語。
もう一つは、その旅を通して主人公自身が変わっていく物語。
この二つは別々のものではなく、重なっています。
主人公は変わるために旅を始めるわけではない。
ただ、欲しいものがあるから進んでいく。
でも、それを本気で追いかけた結果、それまでの自分ではいられなくなる。
そして物語の終わりには、
何を手に入れたのかだけではなく、
その旅の前と後で、その人がどう変わったのか
が残る。
だから私たちは、主人公のゴールだけではなく、その人自身を最後まで見届けたくなるのかもしれません。
ストーリーには、二つの物語がある。
最近は、この見方がとてもしっくりきています。
参考
この記事を書くにあたり、書籍『ストーリーの解剖学』で紹介されているストーリー構造を参考にしながら、自分なりに考えを整理しました。
