世界は、ただの背景じゃない

ストーリーのしくみ

ゲームや映画を見ていると、

「この世界観、好きだな」

と思うことがあります。

大きな街。

深い森。

果ての見えない海。

荒れ果てた大地。

宇宙に浮かぶ巨大な建造物。

私はもともと、こういう「場所」を見るのが好きです。

特にゲームでは、目的地へ向かわずに建物を眺めたり、街を歩いたり、そこに暮らしている人たちを見たりすることがあります。

でも最近、ストーリーについて考えていて、舞台というものの見え方が少し変わりました。

舞台は、

物語を置くための背景ではない。

主人公の弱点や欲求。

キャラクター同士の対立。

物語のテーマ。

そして主人公の変化。

そういった目には見えないものを、「世界」という目に見える形にしたものでもあるんじゃないか。

最近は、そんなふうに考えています。

なぜ、この物語は「ここ」で起こるんだろう?

物語には必ず場所があります。

でも、その場所は何でもいいわけではありません。

森。

海。

砂漠。

都市。

宇宙。

閉ざされた家。

巨大な城。

同じ出来事でも、どこで起こるかによって受ける印象は大きく変わります。

森なら、何が潜んでいるか分からない。

道を外れれば迷う。

人間の管理から離れた場所にも見える。

海なら、どこまでも広がっていて自由にも見えるけれど、ひとたび取り残されれば逃げ場がない。

巨大都市なら、人がたくさんいる一方で、誰からも見られていないような孤独を感じることもある。

宇宙なら、果てしなく広いのに、人間が生きられる場所はごくわずかです。

場所そのものが、すでに何かを感じさせています。

だから今は、世界を見るときに、

「なぜ、この物語はこの場所で描かれているんだろう?」

と考えるようになりました。

世界は、主人公の内面を外側に見せる

ストーリーの主人公は、最初から完成された人物ではありません。

弱さがある。

何かを恐れている。

過去に囚われている。

自由になりたいのに、動けない。

自分でも気づいていない問題を抱えている。

こうしたものは、本来なら主人公の内側にあるものです。

でもストーリーでは、その状態を世界そのものとして見せることができます。

閉じ込められている人物なら、逃げ場のない世界。

迷っている人物なら、先の見えない世界。

自由を求めている人物なら、その自由を奪うような世界。

つまり、

主人公の内側にある問題を、外側の世界が巨大化して見せている。

そう考えると、舞台というものがキャラクターと切り離せないものに見えてきます。

キャラクターの対立は、世界の対立にもなる

以前、キャラクターについて考えたとき、

キャラクターは、他の人物との比較によって輪郭が見えてくる

と整理しました。

主人公とライバルは、同じ問題に対して違う答えを持っている。

だから対立する。

そしてストーリーワールドでは、その違いをさらに大きくすることができます。

主人公が属する場所。

ライバルが支配する場所。

それぞれの社会のルール。

建物。

自然。

技術。

そこで暮らす人々。

そうしたものまで違わせることで、キャラクター同士の価値観の違いを世界そのものに広げることができる。

つまり、

キャラクターが価値観を「人」の姿で表すなら、ストーリーワールドは価値観を「場所」の姿で表す。

そんなふうにも考えられます。

そうすると、対立は会話で説明されなくてもいい。

その世界を見ただけで、

「この人たちは、違うものを大切にしているんだな」

と感じられるようになります。

世界の中には、いくつもの「小さな世界」がある

そして面白いのは、ストーリーワールドが一枚の大きな背景ではないことです。

一つの物語の中にも、

主人公が最初にいる場所。

欲しいものへ向かって進む場所。

ライバルの力が強く表れる場所。

一時的に自由を感じる場所。

敗北や死を感じさせる場所。

最後に決着をつける場所。

といった、いくつもの小さな世界があります。

主人公は物語の中で、それらを移動していきます。

つまり、

場所の移動そのものが、ストーリーの進行にもなっている。

ということです。

単に、

「次の街へ行きました」

「今度は森へ行きました」

というだけではない。

その場所には、

「主人公はいま、物語のどこにいるのか」

を見せる役割もある。

そう考えると、場所の変化にも意味が見えてきます。

主人公が変われば、世界の意味も変わる

ここが、私が特に面白いと思ったところです。

ストーリーでは、主人公が変化します。

だったら主人公の状態を映している世界も、最初から最後まで同じ意味である必要はありません。

場所そのものが変化することもある。

でも、それだけではありません。

同じ場所なのに、主人公が変わることで意味だけが変わることもある。

最初は憧れていた場所が、最後には窮屈に見える。

最初は怖かった場所が、最後には帰る場所になる。

最初は安全だと思っていた場所が、実は自分を閉じ込めていたと気づく。

世界が変わったというより、

その世界を見る主人公が変わった。

だから同じ場所でも、違うものに見える。

これは人間の感覚にも少し似ています。

昔は居心地がよかった場所が、成長してから戻ると妙に狭く感じることがあります。

逆に、昔は嫌いだった場所の良さが後になって分かることもある。

場所そのものは変わっていない。

でも、自分が変わった。

その結果、場所の意味まで変わった。

ストーリーワールドでも、同じことが起こるんだと思います。

世界も、主人公と一緒に物語を進んでいる

ここまで考えると、世界は主人公を置くための箱ではありません。

主人公の弱点を見せる。

欲求を強くする。

ライバルとの価値観の違いを見せる。

物語の段階を示す。

そして主人公が変わると、世界そのものや、その世界の意味まで変化する。

つまり、

世界もまた、主人公と一緒に物語を進んでいる。

そう考えると、「世界観」という言葉の見え方も少し変わってきます。

魅力的な街並み。

美しい自然。

巨大な建物。

もちろん、それだけでも楽しい。

でもストーリーの中では、

なぜこの場所なのか

に意味がある。

その世界は、主人公の何を映しているのか。

そこにいるキャラクターたちは、どんな価値観を持っているのか。

主人公が変わったとき、その場所の意味はどう変わったのか。

そういうことまで考えると、背景だと思っていたものが急にストーリーの一部に見えてきます。

舞台は、ただの背景じゃない

今のところ、私はストーリーワールドをこんなふうに捉えています。

ストーリーワールドとは、主人公の弱点・欲求・対立・変化を、目に見える世界として表現するもの。

そして、

主人公が変わることで、その世界の意味も変わっていく。

だから物語を見るとき、

「この世界、きれいだな」

で終わらせず、

「なぜ、この物語はこの場所でなければならなかったんだろう?」

と考えてみる。

そうすると、今まで背景だと思っていたものまで、ストーリーを語り始めるのかもしれません。


参考

この記事を書くにあたり、『ストーリーの解剖学』で紹介されているストーリーワールドについての考え方を参考にしながら、自分なりに整理しました。

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