魅力的なキャラクターって、何が魅力的なんでしょう。
性格がいい。
かっこいい。
信念がある。
弱いところがある。
過去がしっかり作り込まれている。
もちろん、どれも大事だと思います。
でも最近、キャラクターについて考えていて、少し違う見方が自分の中でしっくりきました。
キャラクターの魅力は、その人一人の中だけにあるわけではないんじゃないか。
その人が誰と関わり、誰と比べられ、誰とぶつかるのか。
そういう人と人のあいだで、そのキャラクターらしさが見えてくる。
どうやらキャラクターというものは、一人では立ち上がらないみたいです。
「優しい人」だけでは、まだよく分からない
たとえば、
「この主人公は優しい人です」
と言われたとします。
なんとなく人物像は想像できます。
でも、それだけではまだぼんやりしています。
困っている人を見たら必ず助けるのか。
仲間には優しいけれど、敵には容赦がないのか。
自分を傷つけた相手まで許せるのか。
大切な人を守るためなら、他の誰かを犠牲にできるのか。
誰と関わるかによって、「優しい」という同じ言葉でも全然違って見えます。
「頑固」もそうです。
同じくらい頑固な相手とぶつかったときに初めて、その頑固さがはっきり見えるかもしれない。
大胆な人物と並べれば、慎重さが際立つ。
現実主義者とぶつければ、理想主義者であることが見えてくる。
つまり、
その人が何者なのかは、他の人との違いによって輪郭が生まれる。
これは現実の人間にも少し似ています。
自分がどういう人間なのかという感覚も、他者との関わりの中で見えてくることがあります。
一人でいるときには気づかなかった自分の性格が、誰かと一緒にいると急に見えてくる。
物語のキャラクターも、どうやら同じなのかもしれません。
ライバルは、主人公の輪郭を濃くする
そのことが特に分かりやすいのが、ライバルです。
良いライバルというと、
「主人公より強い敵」
みたいなイメージがあります。
もちろん強さも必要でしょう。
でも、もっと重要なのは、
主人公の弱いところを突くのがうまいこと
なんじゃないかと思います。
主人公が目を背けている問題を突きつける。
主人公が信じている価値観を否定する。
主人公なら絶対に選ばない方法を選ぶ。
だから主人公は、
「自分は本当にこれでいいのか」
と問われることになる。
そう考えると、ライバルは単にゴールを邪魔する存在ではありません。
主人公が何を信じている人なのかを、一番強く浮かび上がらせる存在
でもある。
主人公だけをどれだけ細かく設定しても、ライバルがいなければ見えなかったものがある。
だから良いライバルを見ると、主人公まで魅力的に見えてくるのかもしれません。
仲間も、主人公を映す鏡になる
ライバルだけではありません。
仲間もまた、主人公を見せてくれます。
誰には弱音を吐けるのか。
誰には強がるのか。
誰の意見なら聞くのか。
何を話し、何を隠すのか。
主人公が一人で考えているだけでは、観客には見えない感情があります。
でも誰かと話すことで、それが外に出てくる。
だから仲間は、主人公の内側を映す鏡のような役割を持っている。
そして面白いのは、仲間だからといって主人公とまったく同じ考えである必要はないことです。
むしろ少し違う。
主人公より慎重だったり、現実的だったり、楽観的だったりする。
その違いがあるからこそ、主人公自身の価値観も見えてきます。
同じ問題に、違う答えを出す人たち
さらに面白いと思ったのが、
物語のキャラクターたちは、同じ問題に対して違う答えを出している
という見方です。
たとえば物語の中に、
「力を持つ人間は、その力をどう使うべきか」
という問いがあったとします。
主人公は、
「人を守るために使う」
と考えるかもしれない。
別の人物は、
「強い者が支配すればいい」
と考えるかもしれない。
また別の人物は、
「そんな力は誰も持つべきではない」
と考えるかもしれない。
全員が、同じ問いを見ています。
でも答えが違う。
そして、その違う答えを持った人物たちが出会い、ぶつかることで、
それぞれがどんな人間なのかが見えてくる。
ここまで考えると、「テーマ」というものも少し違って見えてきます。
テーマは、誰か一人が正解を説明するものではなく、
同じ問いに対する複数の生き方を、キャラクターたちが見せているもの
なのかもしれません。
サブプロットの人物も「もう一つの答え」になる
これはライバルだけではありません。
主人公と似たような問題を抱えているけれど、まったく違う選択をしている人物がいることがあります。
主人公が前へ進もうとするのに対して、その人物は逃げ続ける。
主人公が誰かを信じるようになるのに対して、その人物は最後まで誰も信じない。
同じような傷を持っているのに、まったく違う人生を歩む。
すると、
「主人公も、一歩間違えばこうなっていたのかもしれない」
と見えてきます。
逆に、
「この人物にできなかったことを、主人公は乗り越えたんだ」
と分かることもある。
同じ問題への別の答えがあるから、主人公の選択に意味が生まれる。
これもまた、比較によってキャラクターが見えてくる例だと思います。
キャラクターの魅力は、人と人のあいだにある
こうして考えてみると、魅力的なキャラクターを作るために必要なのは、
その人物一人のプロフィールを、とにかく細かく作り込むことだけではなさそうです。
もちろん、
何を望んでいるのか。
どんな弱さを持っているのか。
何を信じているのか。
そういったことは大切です。
でも、それが本当に見えてくるのは、他の人物と関わったときです。
誰と一緒にいると、その人の優しさが見えるのか。
誰とぶつかると、その人の弱さが露出するのか。
誰と比べると、その人の価値観が際立つのか。
同じ問題に対して、その人だけはどんな答えを出すのか。
そういう関係を見ていくことで、キャラクターは少しずつ立体的になっていく。
だから今のところ、私はこう考えています。
魅力的なキャラクターとは、一人で完成するものではない。
他のキャラクターとの比較や対立によって、
「この人はこういう人なんだ」
という輪郭が浮かび上がる。
そしてキャラクターたちが互いに違う価値観を持ち、同じ問題にそれぞれ別の答えを出すことで、今度は一人ひとりだけではなく、キャラクターの集まりそのものが魅力的になっていく。
キャラクターの魅力は、その人物の中だけにあるのではなく、
人と人のあいだに生まれる。
最近は、この見方がかなりしっくりきています。
参考
この記事を書くにあたり、『ストーリーの解剖学』で紹介されているキャラクターについての考え方を参考にしながら、自分なりに整理しました。
